変えるのではなく、起こるのを待つ

『ゆるぎ石』

1985年、つくば科学博に設置された石。
重さは50トン。

一見、びくともしないその石は、
わずかな揺れに合わせて力を加えると、静かに動きます。

大きな力ではなく、
“合った力”が、変化を生む。

この話は、鍼灸にも通じるものがあります。

鍼灸は、何かを無理に変える技術ではなく、
もともと身体に備わっている力が働くように、
そのきっかけをつくるものです。

鍼灸院を開いて10年。
この道に携わって20年になります。

はじめの頃は、
病を動かそうとしていました。

強い刺激で、大きな変化を出す。
それが正しいと思っていたのです。

「この治療でいける」

そう思える時期もありました。

けれど、あるとき
小川卓良 先生の言葉に触れます。

「鍼灸院には、自分の力量に合う人しか来ない」

多くの人が来ることと、
本質的な力は、必ずしも一致しない。

その言葉をきっかけに、
これまでの自分のあり方を見直すことになりました。

変えようとすること。
動かそうとすること。

それ以外に、方法はないのか。

そう考え始めたのです。

たとえば、人が前に進むとき。

手を引くこともできるし、
背中を押すこともできる。

どちらが正しいかではなく、
どちらがその人に合っているか。

あるいは、
何もしないという選択もあるかもしれません。

「待つ」という関わり方です。

人には、自分を整え、治そうとする力があります。

その力が働くためには、
急がせないことも必要です。

ゆるぎ石のように、
すでに揺れているものを感じ取ること。

その微細な変化を読むこと。

そして、ほんの少しだけ関わる。

西洋医学が大きな力で変化を生む一方で、
東洋医学には、別の役割があるように思います。

小さな変化を捉え、
最小限の刺激で、流れを変える。

それが、自然治癒力に寄り添う医術だからです。

「鍼灸は時間がかかる」

そう言われることもあります。

けれど、必ずしもそうではありません。

条件が整えば、
わずかな刺激で、身体は応えます。

動かすのではなく、
動き出すのを待つ。

私の鍼灸は、
そのような考えのもとにあります。

これから鍼灸を受けようと考えている方は、
どのような考えで施術をしているのか。

あらかじめ知っておくことも、
ひとつの選び方だと思います。

過去の記録と、いまの思考。

それぞれ別の場所に残しています。

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必要な時にのぞいてみてください。

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