これまで、さまざまな方をみてきました。
腰痛、肩こり、膝の痛み、頭痛。
日常的によく見られる不調も多くあります。
その中で、見過ごされやすいものがあります。
「不定愁訴」と呼ばれる状態です。
検査では異常が見つからない。
けれど、つらさは確かにある。
めまい、倦怠感、ふらつき、動悸。
目の違和感や、なんとなく続く不調。
はっきりとした原因が分からないまま、
長く抱えている方も少なくありません。
こうした背景にあるのは、
ストレスの蓄積と、自律神経の乱れです。
生活リズムの乱れ。
環境の変化。
疲労の積み重なり。
それらが重なることで、
交感神経と副交感神経のバランスが崩れていきます。
来院される方の多くに共通しているのは、
「緊張が抜けない状態」です。
では、なぜ緊張し続けてしまうのか。
脳の働きでいうと、扁桃体という部分が関係しています。
危険や不安を感じ取ると、身体を守るために反応を強める。
本来は必要な機能です。
ただ、その状態が続くと、
常にアクセルを踏み続けているような状態になります。
一方で、それを抑える役割を持つのが前頭葉です。
経験や記憶をもとに、「本当に危険か」を判断する。
けれどストレスが強くなると、
そのバランスは簡単に崩れてしまいます。
結果として、過緊張が続き、
心身の疲労へとつながっていきます。
では、どうすればよいのか。
特別なことではありません。
日常の中に、
少しだけ“いつもと違うこと”を入れる。
人と会って話す。
表情を見る。
空気を感じる。
そのやりとりの中で、
緊張はゆるんでいきます。
触れることも同じです。
人や動物に触れると、
安心やつながりに関わる働きが生まれます。
やわらかいものに触れる。
誰かを思いやる。
感謝を感じる。
そうした行為の積み重ねが、
張りつめた状態を少しずつほどいていきます。
効率や利便性が高まる一方で、
人が本来持っていた感覚は、
どこかに置き去りになっているのかもしれません。
だからこそ、
少し“動物的に”戻ること。
それは、乱れた状態を整えるための
自然な方法でもあります。
鍼灸院という場所には、
対話があり、
触れることがあり、
整える手段があります。
不調を治すだけでなく、
人としてのバランスを取り戻す場所。
そのような役割も、あるのだと思います。
もし、理由のはっきりしない不調が続いているなら。
ひとつの選択として、取り入れてみてもよいかもしれません。

