ある人は、
子どもにこう教えるそうです。
「本は甘い味がする」
もちろん、
本に味はありません。
けれどその言葉によって、
学ぶことは苦痛ではなく、
喜びとして記憶されていく。
これは、
“最初の意味づけ”の話です。
同じように、
鍼もまた、
本来は怖いものではありません。
生まれたばかりの子どもは、
鍼の存在すら知りません。
それでも怖くなるのは、
大人がそう教えるからです。
「痛くない?」
「我慢できる?」
その言葉が、
恐怖をつくっていく。
以前、
受け継がれる苦しさについて書きました。
身体的なことだけでなく、
言葉や意味づけもまた、
次の世代へと渡っていきます。
臨床の中で感じるのは、
人は無意識のうちに、
自分を縛る行動を選んでいるということです。
力を抜けない。
休めない。
頑張り続けてしまう。
なぜそうなるのか。
多くは、
幼い頃に受けた関わりの中で、
「条件」が作られているからです。
認められるためには頑張らなければならない。
評価されるためには努力しなければならない。
そうした前提が、
いつの間にか「当たり前」になる。
その結果、
自分を削るような選択をしてしまうことがあります。
過剰に働く。
無理をする。
休めない。
あるいは、
体調を崩すことで、
ようやく安心できる人もいます。
本人が望んでいるわけではありません。
ただ、
そうすることでしか、
バランスが取れなくなっているのです。
では、
どうすればそこから抜け出せるのか。
まず必要なのは、
自分のパターンに気づくことです。
どんなときに無理をしているのか。
どんな前提で動いているのか。
「〜すべき」
「〜しないと認められない」
その考えは、
本当に事実なのか。
一度立ち止まって、
問い直してみる。
そのうえで、
いきなりやめようとしなくていい。
少しだけ変えてみる。
別の行動に置き換えてみる。
そして、
できたことを自分で認める。
小さな変化で十分です。
そうして少しずつ、
これまでのパターンを緩めていく。
時間をかけていい。
急ぐ必要はありません。
あなたが間違っているのではなく、
これまでに受け取ってきた情報に、
偏りがあっただけです。
それは、
書き換えることができます。
鍼や灸、マッサージは、
その過程で生じた身体の緊張を緩めます。
ただし、
それだけで全てが変わるわけではありません。
大切なのは、
自分で自分を緩めることです。
少しずつ、
自分の感覚に従って選ぶこと。
それができるようになると、
日々の暮らしは、
静かに変わっていきます。

