先日、患者さんのご主人が亡くなりました。
「思い出すと涙が止まらない」と奥さんは言います。
昔ながらの亭主関白な方で、
奥さんはその口調を真似しては笑っていました。
少し前に体調を崩し、入退院を繰り返し、
奥さんは自転車で川向こうのリハビリ施設まで通っていました。
家主のいない家。
静まり返った夜。
一緒にいれば喧嘩をした。
「私はバカだからね」と笑い合えた日々。
それが、いちばん尊い時間だったのかもしれません。
87歳。
天寿を全うされました。
私にも90代の祖母がいます。
市内の施設で暮らしています。
私はおばあちゃん子でした。
この仕事を選んだ理由の一つは、
祖母に長生きしてほしかったから。
でも「治療をすることで長生きしてもらう」という発想は、
どこかで“いつかはいなくなる”という事実を否定してしまう気がして、
私はただ会いに行くことしかできませんでした。
この歳になって、考えることがあります。
あと同じだけ生きたら、父と同じ年齢になる。
これまでに何をしてこれただろう。
これから何ができるだろう。
そんなときに手にした一冊の本。
『100年の旅』
0歳から99歳まで、それぞれの年齢に一言が添えられています。
94歳
「毎年、空きになったジャムのびんを食器棚にしまうとき、このびんをまた使うことがあるのだろうか?と自分に問いかける」
その一文を読み、
私はページをめくる手を止めました。
生まれて、
成長して、
やがて老い、
そして別れる。
当たり前のことなのに、
5歳のころ、
「お母さんもいつか死んじゃうの?」と泣いたことを思い出します。
99歳
「人生で、何を学んだのだろう?」
私は、13分半の曲を聴きながら考えています。
もしあなたの人生が100ページの本だとしたら、
99ページ目には、どんな言葉が挿入されるでしょうか。
成功の数でしょうか。
守ったものの数でしょうか。
それとも、愛した時間の記憶でしょうか。
長生きできる薬はありません。
長生きできる鍼灸もありません。
けれど、
「生きていてよかった」と思える瞬間を増やすことはできる。
その積み重ねが、
99ページ目の一行になるのかもしれません。
あなたの99ページ目には、
どんな言葉を書きたいですか。

