ある著名なドラマーの歩みを知って、思った。
玄人と素人の違いは、
派手な技術ではない。
“間”に出る。
彼は若い頃から才能があったと言われている。
けれど、
できることに甘えなかった。
基礎に戻り、
現場を重ね、
評価を得たあとも、また学び直した。
その理由は、とてもシンプルだった。
「ちゃんと知りたい」
その姿勢を、
何十年もやめなかったという。
能の世界では、
一歩の踏み出し方
止まり方
沈黙
それらが空気を変えると言われている。
音を鳴らすことよりも、
音を鳴らさない時間のほうが難しい。
玄人は、そこを磨く。
これは、音楽だけの話ではない。
声のトーン。
言葉を置く間。
立ち上がるときの動作。
手の差し出し方。
ほんのわずかな機微に、
その人が積み重ねてきたものがにじむ。
技術は真似できる。
けれど、
所作の奥にある心構えは隠せない。
私は仕事柄、
人の声や呼吸、
身体の小さな反応を見ることが多い。
本当に整っている人は、
動きが静かだ。
本当に迷っている人は、
言葉が少し急ぐ。
その違いは、
大きな音ではなく、
ほんのわずかな揺れに出る。
玄人とは、
結果を持っている人のことだろうか。
それとも、
長く続けている人のことだろうか。
あるいは、
間を粗末にしない人
なのかもしれない。
好きなことを、
「ちゃんと知りたい」と思えるか。
その問いを、
何年も持ち続けられるか。
その姿勢は、
派手な場所ではなく、
静かな時間に現れる。
音は、誰にでも聞こえる。
けれど、
音のない時間に流れているものは、
少し注意しないと気づかない。
その差が、
少しずつ、
人の奥行きをつくっていくのだと思う。

