百獣の王であるライオンにも、弱点があることを知っていますか。
ライオンほどの強い動物でも、
足に小さな棘が刺さると衰弱してしまうことがあるそうです。
あれほど小さな棘でも、体にとっては大きなストレスになるのでしょう。
人間なら指で抜くことができますが、ライオンにはそれができません。
たった一つの棘が抜けないだけで、命を落としてしまうこともあるのです。
今日はライオンの話をしたいわけではありません。
ただ、
どんなに小さなことでも身体にとっては大きな負担になる
ということをお伝えしたいのです。
私は鍼灸師として20年、
行徳で開院してからも12年が経ちました。
その中で感じていることがあります。
それは、病気になってから来院する方ほど鍼灸への期待値が高いということです。
長い時間をかけて悪化した症状。
病院でも改善しなかった不調。
そうした状態になってから鍼灸を受けに来る方は少なくありません。
しかし同時に、
そうした方ほど「すぐに効果が出ること」を求めてしまいます。
私は医師ではありません。
診断をすることもできませんし、
薬を処方することもできません。
できることは、鍼と灸を用いて
- 筋肉の緊張を緩める
- 自律神経を整える
- 免疫の働きを高める
そういったことです。
以前、ある人がこう言っていました。
「日本における鍼灸(保険外)の立ち位置は、占いやサプリメントと同じ」
この言葉を聞いて、私は特に否定的な気持ちはありませんでした。
日本では、
保険の範囲で薬が処方されることが“治療”
という認識が強いからです。
その認識のまま鍼灸院に来ると、
西洋医学と同じ効果を期待することになります。
つまり
一回で変わること。
しかし、薬の効果というものは強ければ強いほど不自然です。
そしてその裏側には、副作用という形で身体の負担が存在します。
それに対して私たちは、あまりに盲目的になりがちです。
この20年で、医療に対する人々の感覚は大きく変わったと感じています。
携帯電話がスマートフォンに変わり、通信速度が上がり、
人の時間感覚も変わりました。
今では
「コスパ」
「タイパ」
という言葉が当たり前に使われています。
医療にも、同じ価値観が入り込んできました。
以前は、鍼灸や漢方を受ける人は
時間がかかることを理解したうえで来院していました。
ゆっくりでも本質から回復したい。
そう考えている方が多かったのです。
しかし最近では、
「鍼灸や漢方は効くのが遅い」
そう言われることが増えました。
時代が変わったのだと思います。
もし即効性を求めるのであれば、
病院での治療が最も良い選択でしょう。
鎮痛剤や神経ブロックなど、
短時間で痛みを抑える方法があります。
それは対症療法ですが、
求めている結果をすぐに得ることができます。
一方で、鍼灸や漢方は違います。
ゆっくりと、
身体の内側から変化していく医療です。
自律神経、免疫、内分泌。
そうした身体の働きを整えることで、
結果として症状が変化していきます。
どちらを選ぶかは、
その人のライフスタイルによると思います。
これまで鍼灸院を続けてきて感じるのは、
実は体調管理のために来院する方が多いということです。
寝違えや五十肩、
テニス肘やぎっくり腰などは、
一度の施術で症状が軽くなることもあります。
しかし「一回で治す」と言う人がいるとしたら、
私はそれを少し不自然に感じます。
痛みが取れても、
数日後に再発することもあります。
それを「治った」とは言わないからです。
もし痛みをすぐに取りたいのであれば、
整形外科で鎮痛剤や神経ブロックを受ける方が
コストも時間も効率的かもしれません。
それでも鍼灸を選ぶ人は、
対症療法だけではなく、体の状態そのものを整えたい
そう考えている人だと思います。
症状は、突然生まれるものではありません。
多くの場合、
長い時間の蓄積によって現れます。
だから一回で劇的に変わることはありません。
そして鍼灸は、
奇跡を起こす医療でもありません。
ライオンの体に刺さった棘は、
たった一つでも命を奪うことがあります。
痛みというものは、
それほど厄介なものです。
友人から
「鍼灸や漢方は不透明だ」
と言われたことがあります。
その理由は、
病名に対する治療ではないからだと思います。
しかし世の中には、
バタフライエフェクトという考えがあります。
小さな出来事が、
思いもよらない大きな変化につながる。
鍼灸も、それに近いものかもしれません。
小さな刺激が、
自律神経
免疫
内分泌
に作用し、
身体の自然治癒力を引き出していく。
それが鍼灸の働きです。
ただし、痛みに苦しんでからでは遅いこともあります。
本来は、
何もない時から整えておくことが大切だと私は思っています。
日本は社会保障が充実しています。
しかし、より健康を求めるのであれば
睡眠
運動
栄養
そしてその一つの選択として
鍼灸を取り入れることをおすすめします。

