教員課程に進んだ頃の話。
ある講師が、ホワイトボードに太極図を描き、こう問いかけた。
「白と黒の境は、いったいどちらになるのだろう?」
私はその問いがとても面白かった。
あれから10年以上が経った今でも、ときどきその言葉を思い出す。
そして思う。
すべては揺らいでいるのだと。
光は移ろい、
風は流れ、
波は寄せては返し、
音は生まれては消えていく。
春が夏へと移り、
夏が秋へ、
秋が冬へと向かうように、
季節もまた、境界のないまま移ろっていく。
そして、命もまた同じなのだと思う。
私たちは一つの個体として存在しているようでいて、絶えず変化し続けている。
このゆらぎに、諍うことはできない。
だから、世界を白か黒か、善か悪かという二元論だけで捉えることもできないのだろう。
境界は、思っているほど明確ではない。
私たちは、そのあわいを生きているのだから。
この考えに至ったのは、あまりにも一方向からの価値観や考え方に触れる機会が増えたからかもしれない。
そして、その考えが、まるで唯一の正解であるかのような空気に、どこか違和感を覚えた。
本来、すべては揺らぎ、移ろい続けている。
それにもかかわらず、白か黒か、正しいか間違っているかだけで世界を切り分けようとすると、見えなくなるものがある。
立派なことを言いたいのではない。
ただ、いまの社会に足りないものは、過去の気づきの中にあるはずなのだ。
変わり続ける世界のなかで、それでも人を信じ、明日を信じ、自分の歩む道を信じる。
そんな不確かな世界のなかで私たちが生きていくためには、未来を信じることなのだと思う。
そんなことを、ふと思った。

