人体は、機械のような複雑さとは少し違い、
驚くほど精巧で、
どこか美しく、神秘的な構造を持っています。
機械であれば、
異常があればアラームが鳴る。
けれど人間は、
そう単純には教えてくれません。
腎臓の上に、
副腎という小さな組織があります。
重さは、わずか10gほど。
けれどその働きは、
とても大きい。
コルチゾール。
アルドステロン。
アドレナリン。
生命を維持するために欠かせない
ホルモンを分泌し、
血圧。
血糖。
電解質。
そして、ストレスへの適応。
全身のバランスを、
静かに保ち続けています。
今回触れたいのは、
コルチゾール。
血糖を上げ、
エネルギーを確保し、
炎症を抑える。
本来は、
「守るため」に働くものです。
けれど、
それが長く続いたとき、
身体は別の状態へと傾いていきます。
慢性的なストレス。
睡眠不足。
不規則な生活。
過度なカフェイン。
こうした積み重ねの中で、
コルチゾールは増え続け、
身体は
“戦闘状態”へと切り替わっていきます。
夜中の3時や4時に目が覚める。
朝、顎に力が入っている。
起床時間が定まらない。
お腹まわりに脂肪がつく。
手足が冷える。
血流は中心へ集まり、
末端は後回しになる。
消化は落ち、
食後の膨満感。
過敏性腸の症状。
そして、
甘いものや、塩分の強いものを欲する。
それは意思の弱さではなく、
身体が、そうせざるを得ない状態にあるということ。
さらに、
思考はぼんやりし、
集中力や記憶も落ちていく。
そこでまた、
カフェインで無理に引き上げる。
一時的には回復したように感じても、
その循環は、
静かに負担を深めていきます。
こうした状態が続けば、
さまざまな不調として現れてきます。
けれど、
それぞれの症状だけを追いかけても、
本質には届きません。
大切なのは、
いま身体がどの状態にあるのか。
戦っているのか。
それとも、休めているのか。
その視点です。
とはいえ、
現代の中で
ストレスを完全に無くすことはできません。
だからこそ、
日々の中で、
少しずつ戻していく。
風呂上がりに、
短い冷水。
朝の光を浴びること。
ゆっくりとした呼吸。
身体をゆるめる時間。
それだけでも、
状態は静かに変わっていきます。
鍼灸もまた、
興奮した神経を鎮め、
休息へと導くための一つの手段です。
ただし、
すぐに何かが変わるというよりも、
少しずつ、
戦闘状態から離れていくためのもの。
時間は、かかります。
けれどその分、
深いところから、
変化していきます。
これまで、
対症的な関わりの中で、
繰り返される不調を、
多く見てきました。
だからこそ今は、
症状だけでなく、
その背景にある構造に
目を向ける必要があると感じています。
身体。
思考。
生き方。
それぞれは、
切り離されたものではなく、
ひとつの流れの中にあります。
その流れを、
少しずつ整えていくこと。
そこに、
本当の意味での回復があるのだと思います。

