常時見かける病気の鍼灸治療|感冒〈cold〉

劉強 編著 河南科学技術出版社
慧光鍼灸院 池澤肇 抄訳

はじめに
鍼灸学校では、具体的な病気の治療方法は教えてくれませんでしたので、卒後開業してから、患者に向き合いながら、正に悪戦苦闘の日々でした。

そんな中、私は上海に行き新華書店で鍼灸の書籍を買い漁り、鍼灸この道40年以上の方々の臨床経験を自分の物にして、早く患者さんの苦痛を取ってあげたいと思いました。

鍼灸の道に入門した方々に、平易で且つ安全な鍼灸ができるために、恰好な書籍がありましたので、その抄訳を行って、皆さんの日常の臨床で役立てて頂き、少しでも回り道しないで、鍼灸の面白さを知って頂ければ、これに勝る喜びはありません。

なお、刺鍼の難度の高いものや、安全を考慮して一部は割愛しました。

特に刺鍼の深さ、方向、刺激方法、置鍼の間の5-10分毎の鍼の刺激などは効果を出すために重要となります。また、患側或いは健側の取穴には留意されたい。

作者は古典からの引用を多くしております。

例えば、『玉龍歌』、『肘後歌』、『類経図翼』、『鍼灸大成』、『標幽賦』、『馬丹陽天星十二穴治雑病歌』、『資生経』、『千金方』、『十四経要穴主治歌』、『攔江賦』、『鍼灸甲乙経』、『通玄指要賦』、『雑病穴法歌』『医学入門』、『医学綱目』、『備急灸法』、『席弘賦』、『勝玉歌』などがあります。

これら古人の治療経験は現代でも通じる。いずれ、時を見てこれらの翻訳をしていきたいと思っています。

文中には新しい治療方法が網羅されています。

例えば、『腕踝鍼』、『耳鍼』、『刺絡』『指圧による治療』、『火鍼』、奇穴によるものなどは、図示したので参考にして下さい。

お灸では棒灸、生姜灸などが多用されています。

作者紹介
劉強老子。天津市冶金医院院長、主任中医師、鍼灸歴40余年、『黄帝内経』、『傷寒論』、『金匾要略』を深く研究している。豊かな中医理論基礎と臨床経験を持っております。中医内科、婦人科、難病分野が得意。
なお、本書は1993年に出版されてから20数年が経過しました。内容が解りやすく、治療効果も高く、実用的であるので広く読者の好評を得ており、版を重ねて第三版となります。

内科疾患の鍼灸治療

一.感冒
1.液門
一寸の鍼で掌骨間に0.5寸から1寸刺鍼して捻転を数回行う。
10分置鍼しても効果が少ない時は更に片方の穴に刺鍼する。
置鍼は15~30分とする。同穴は三焦経で清熱、解表、表里調和作用がある。
感冒の第一霊(特効の意味)と言われており効果が良い。

2.大椎
三棱針で刺絡後、抜罐を行い取血する。5~10分間留罐する。
汗が出て感冒が治る。或いは棒灸で大椎に20分施灸する。
或いは生姜灸で3~5壮、毎日2~3回施灸する。
清熱、疏風解表の作用があり、発熱して汗が出ない時に有効。

3.列缺
1.5寸の鍼で肘関節に向けて30~40度の角度で1寸ほど斜刺して捻転補瀉を行う。
針の響きが肘関節の方に行けばなおよし。
置鍼30分。風邪症状で、頭痛、咳嗽などの症状の改善。

4.合谷
左右取穴、1.5寸の鍼で1寸程度刺鍼して雀沢捻転補瀉を2分間行う。
汗が少し出てくる。置鍼30分。発熱悪寒の時に使用する。

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