鍼灸の概要

今回はホームページの【PROCESS】でも紹介していますが、鍼灸の概要について紹介したいと思います。

私たち鍼灸師は決して出鱈目に鍼灸をおこなっているわけではなく、一定の臨床的法則をもって目的や目標に向くように施術をおこないます。

それは「垂直的思考」(機械的情報処理)と「水平的思考」(生物学的情報処理)を併せたものです。

具体的なものを紹介します。

鍼施術は一定の方式により「鍼」を用いて体表より接触、穿刺し、機械的刺激を生体に及ぼし一定の生体反応を起こして、生体の示す変調を矯正し、また疾病治癒に寄与する方法であって、保健、疾病予防、治療に広く応用する(定義)。

灸施術は一定の方式により「もぐさ」またはこれに類する物質を用いて、燃焼し体表より温熱的刺激を生体に及ぼし、一定の生体反応を起こして、生体の示す変調を矯正し、また疾病治癒に寄与する方法であって、保健、疾病予防、治療に広く応用する(定義)。 
参考:『鍼灸の科学 理論篇|芹沢勝助|医歯薬出版株式会社』

そして、私たちがおこなう長野式治療は長野潔先生(1925年~2001年)が伝統鍼灸だけでなく先達の多くの書物を渉猟し、西洋医学の理論・知見を研究、検証して30万人以上の患者の身体を通して創りあげた「即効性」「再現性」「多様性」に優れた完成度の高い治療体系となっております。

具体的には、私たちには本来、様々な怪我や病気を自分自身の生命力で治してしまう「自然治癒力」があります。

擦り傷なども自然に傷がふさがり治ってしまいます。

病院で手術しても傷がくっついて治るのは治癒力があるからです。

しかし、様々な慢性症状で苦しんでいる方はどうでしょうか。

私たちは、そのような状態を「自然治癒力がうまく働けない状態」であると考えます。

それは、自然治癒力の働きを阻害する因子もしくは状態があるということです。

例えば、自然治癒力阻害因子として考えられるものは「免疫力の異常(低下や過剰、扁桃病巣感染症など)」「自律神経・内分泌の異常(不定愁訴、更年期障害など)」「血液循環の異常(循環障害、冷え、鬱血、お血など)」「筋肉の不調(硬化、緊張、緩み、身体の歪みなど)」「気の異常(不足や停滞・経絡の不調)」です。

ただ「気の異常」ということに関しては様々な意見があるかもしれませんが、私の考えとしては「気」は生命活動のエネルギーであり、それは生体において微弱な電気だと思っています。

それらが上手く流れない、滞ることによって体の恒常性(秩序)が乱れるために病気になるのではいか?という仮説を立てています。

ですから鍼施術で金属を使う理由、原始時代から歯、爪、石で放血させることの目的はこういった部分にあると思うのです。

よって鍼を使用して自然治癒力阻害因子を改善、除去できれば自然治癒力が自ずと高まり、スムーズに働き、様々な症状は治癒へと向かいます。

医師はこの点において見えないものだから非科学として扱うのですが、医師も科学者も「元気ですか?」と日常会話をするのに信じないというのは不思議なものです。

気の正体については、AERA DIGITALで帯津三敬病院の名誉院長である帯津良一先生が分かりやすく解説しているので後日改めて紹介させていただきます。

さて、鍼灸ですがその効果は7割に何か効くそうです。

つまりサルでも子供でも効果が出せるのです。

では何が難しいかと言うと、刺激量の調整がとても難しいと思います。

効きすぎるからこそ出鱈目に出来ないのです。

鍼が肌に当たる、刺されば、必ず変化が生じるわけですが、目の前の生きた人(年齢・性別・怪我・病歴・手術歴・出産歴・仕事歴・社会歴・家族歴・趣味嗜好など)に対してどのように言葉をかけて、どのように刺激を与えるかが難しいのです。

そして刺激に耐えられる、反応できる体質や病状なのか。
さらにはどれくらいの時間や期間で回復するのかしないのか。

「垂直的思考」(機械的情報処理)と「水平的思考」(生物学的情報処理)というのは、そのためにおこなうのです。

患者さんの職場の方が「鍼灸を受けて効果がなかった」という方がいたそうで相談を受けたのですが、鍼灸は必ず変化があります。それは生命体であれば必然だと考えていただいただけたら良いです。

ではなぜ効かなかったか。

それは「変化できる状態ではない(身体の秩序が乱れている)」「刺激量の過不足」「思考や行動の影響」「器質的な問題」「施術者の技術」というものがあげられるでしょう。

ただ、20年以上やってきて思うことは、植物を含めて生物に刺激を与えれば変化は生じるのに、変化しないということは心理的要因が大きいことを理解していただきたいと思います。

つまり西洋医学は急性の外傷や炎症などの器質的原因がある「痛み」に対しては非常に有効であるのに対して、慢性痛や線維筋痛症、心因性疼痛など原因が明確でない痛みに対しては対症療法に頼る傾向があるのです(痛みの主観的側面に対して客観的な測定や治療が難しい)。
※WHOでは「痛みは身体的・感情・社会的要素を含む」と定義していますが、西洋医学では生物医学モデルに強く依拠しており、心理・社会的要因を軽視しがちである

その背景にああるものは、西洋医学がデカルト的な心身二元論に由来していて、心と体をわけて考える傾向が強いからです。

一方で東洋医学は心身一如という考えが基盤にあり、痛みに対して身体的・精神的要因が統合的に扱われます。
よって患者さんの話し方、感情の変化、体質などを重視するため、個別的・主観的な痛みや心の状態に対応できるのです。

ですから「鍼灸を受けて効果がなかった」というのは、広義的に気が足らないということも考えられますし、さまざまな要因が絡み合ってるということになります。

実際に植物や子供や動物は微かな刺激で事足りてしまいますから、人間はいかに心理的な影響を受けやすいかがよく分かります。

鍼灸はむやみやたらに、出鱈目におこなっているのではなく、心身を診ておこなわれていることをご理解いただけたらと思います。




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