鍼と料理は近しいものがある

「手が込んでいる料理は美味しい」。

そう思う理由が何らかあるのだと思うのですが、質素ゆえに良いというものもあります。

例えば、塩むすび。

あえて塩を多めにして作るのですが、時間が経過してからの米自体の甘さが引き立ちますよね。

また米と海苔はどうしてあんなに合うのか。

話が横にそれましたが、鍼灸も同様のことが言えます。

それは手際であったり、手数であったり、そして会話であったり。

どうしてもこれらがちぐはぐだと間が抜けるわけですがそれは料理も同じです。

塩加減が難しくて、何を入れても味が決まらない。

結果的にゴールが分からなくなるなんてことは皆さん経験したことがあるでしょう。

あら汁なんかは、その豪快さや複雑さが深みになるものの、全部が全部そのようなものにはなりません。

鍼灸を学び始めてると、施術のゴールが分からなくなるから、1+1+1・・・というようにやることが増える。

そして患者さんは何に対して効いているか分からくなるわけです。

仮に良くなったと感じても一時的であったり、瞑眩をおこすわけですが、1つのツボないし鍼が身体に与える刺激というものは想像よりも大きいもの。

料理を作っていてお腹がいっぱいになるのも、それに近いのかもしれません。

嗅覚、視覚、聴覚、触覚、味覚というあらゆる情報を入力しながら調理するのですから脳からしたら情報量が多いですよね。

ですから鍼灸も手数が少ないに越したことがないと思うのです。

かといって少ないと、それが強く効きますから、ある程度のバランスというものは必要なのでしょう。

鍼と料理は選択と決断の連続であり、また創造性が必要なものですから、芸術性を含めても近しいものがあると思います。

私は気晴らしに料理をすることがありますが、その時の頭の中のことや段取りは施術時と変わりません。

足すではなく、引くことで簡略的に、正確な答えを出すように心がけています。

手が込んだ施術は体には重たいですよ。

身体はそんなに多くの情報処理ができません。

「シンプルで印象に残る」ということが施術では大切なような気がします。

私たちの施術は「足す」ではなく「引く」ための施術です。

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