当院ではじめて鍼灸を受ける方が来た時。
私の頭の中ではこのようなことを考えています。
患者さんが遅刻をするか、遅刻をしないか。
チャイムを鳴らすか、鳴らさないか。
ドアを開けて挨拶をするか、挨拶をしないか。
その時に声が大きいか、小さいか。
例えば、はじめの約束した時間というものは日ごろの「緊張感」というものに繋がりますし、挨拶時の声の大小では「性格傾向」や「対人姿勢」が分かります。
そしてカルテの書き方では丁寧さや細かさにより「不安」「几帳面」「関心の薄さ」などが現れますし、カルテの渡し方やペンの置き方も人それぞれです。
Aさんの主訴が肩こりだったとして、予約時間の5分間に到着したとします。
ドアを開けて「すいません、予定より早く着いてしまいました」と一言。
玄関で日傘を畳んで置き、靴を揃えています。
そして椅子にかけて、荷物を抱える。
カルテの字は小さく、そしてキレイな字で書かれていて、指示した部分以外にも書いている。
このような場合、どのような理由で肩こりを発症しているのか。
仮に遅刻をする、挨拶はしない、靴は雑然としており、荷物は床に置いて、カルテも雑に書かれている。
この場合、同じ肩こりであっても性質が同じとは想像できないわけです。
中医学により前者が「虚」で後者が「実」だとして、コミュニケーションも施術内容も異なります。
前者は、他者への配慮が強く、遅刻は信用を失ってしまうと考えており、不安傾向にある完璧主義の可能性を考える。
そして、内向的で対人不安傾向が強いかもしれない。
そのため疲れやすく、週末になると疲れて外出したくなかったり、人と会うことを控える。
そんなAさんが、施術室への移動時に椅子をしまっていなかったら。
他者への配慮が強く、不安傾向に強いと考察していたのに、ふとした瞬間に気を抜くと本来の姿が出るわけです。
もしくは緊張が抜けて忘れていたのかもしれない。
ただ、それらは、施術室に移ってからの腹診、脈診での情報でAさんの今が見えてきます。
つまり、Aさんの肩こりが凝り感なのか、凝っているのか。
何が言いたいかというと、虚に見えて実であるかもしれないわけで、実であって虚であるかもしれないのです。
ただ、まだ考察の段階であるため、これを基準に幾つか質問をします。
①いつから?
②どこが?
③どのように?
④どの程度?
⑤どのような状況で?
⑥どんな時に悪化しますか?
⑦どんな時に軽くなりますか?
⑧同時に出る症状はありますか?
他にも意図的な質問をしますが嗜好品についても聞きます。
Aさんが「朝はコーヒーとパンで済ませます」「仕事の合間に甘い物を摂ります」「ジムに通っています」といったことに対して、なぜなのかを考えるのです。
カフェインの摂取量と栄養失調、ストレスの耐性と血糖値スパイク、運動の強度や過去の怪我。
これらがAさんの肩こりと何か関係しているか?
患部の情報をみながら、経絡の歪み、臓腑の影響を情報の1つに何が起きているのかを考え、生理について伺い、運動歴や既往歴を確認し、歯列矯正やインプラント、レーシック、ダイエット歴、自律神経失調やパニック障害などのメンタルを壊したことなども加味します。
この肩こりが過去の既往歴と関係があるのか、運動不足なのか、内臓の影響なのか、炎症なのか冷房による冷えなのか、アクセサリーによる経絡の不調なのか、アトピー性皮膚炎があれば気質的なことも考えます。
病なのか疾患なのかを考えながら施術内容を選択して、仰向けからスタートするのか、横向きの方が良いのか、うつ伏せにするのかは症状の程度、汗の状態、化粧の状態によっても異なります。
また鍼の細太、長短、本数、時間、灸をおこなう場所や壮数、灸をするかしないかも体力や症状の程度によって変えます。
私はこれを患者さんに会って直ぐに把握して、会話や問いかけ方を変えて短時間で情報を集めて察知されないように準備に移ります。
さらに東洋医学においては気象や季節、気分も関係しますから、肩こりだとしても単に鍼を刺してお終いではなく、全体を把握してから施術をおこなう必要があると思うのです。
私は施術を開始する前に頭の中でツリー構造を作り、問いに対して考察をして変化に合わせながら施術をおこなうのですが、常に1つのパターンで何かをおこなうことはありません。
しかしベースとなるものはあります。
次回は具体的な施術に関してのことを書いてみたいと思います。