病気を治すためにどうするか

「病気が体表にある時は湯液や膏薬が効き、血脈に進行した時は針が効きます。胃腸に進行した時は薬酒が効きます。しかし、骨髄にまで進んでしまうと神様ですらどうしょうもありません」
参考書籍:『鍼灸治療の真髄|岡部素道|績文堂刊 』

これは病気における治療の順序になりますが、最も大切なことは病気にならないことであり軽微な状態で回復することです。

つまり第一の目的は「予防」です。

病気は表(皮膚)から裏(内臓)へ入りますから「風邪は万病の元」になります。

風邪を拗らせると治るまでに相当の時間を必要としますから、風邪にかからないように気をつける必要があるのです。

予防には手洗いうがいの他に、外因(風・寒・暑・湿・火)、内因(喜・怒・憂・思・悲・恐・驚)、 不内外因(不摂生・心身の過労・性生活の不摂生・不規則な生活・不適当な住居環境・外傷・虫さされ・虫や獣の毒)の見直しが必要です。

そして病気を治すためではなく健康維持として、定期的に鍼で身体に傷をつけ、灸で微細な火傷をつくり体温と免疫力を上げることを推奨します。

現代社会における漢方や鍼灸の立ち位置は“ 治療 ”ではなく“ 健康管理 ”ですが、多くの方は重度の病気で治療を求めながらも週に1回、2週に1回、月に1回、半年に1回、1年に1 回のペースで通いますがそれでは希望する結果は得られません。

このような頻度で治癒するのは動物や子供、アジア諸国やアフリカに暮らす人々くらいでしょう。

なぜ鍼灸師と患者の見解に差が生じるかというと、治療は健康保険が適応されるものであって薬を服用して短時間で回復すると認識されているからです。

一方で鍼灸や漢方は健康保険が適応されずサプリメントや占いと同じ位置づけとして認識されています。

現代社会は科学の恩恵を受けることで多くの病気を救ってきましたが、コロナ禍において科学に限界があることに気づいたのではないでしょうか。

もちろん発症してからは西洋医学による対症治療による早期回復は重要ですが、自身で感染しないための行動と共に免疫力や治癒力を備えない限りは自分を守ることはできません。

私が東洋医学をおこない、治る医療を提案・実践している理由は、身体に備わっている自然治癒力という自然の秩序(自然と体が正常な状態を保とうとする力)を正常に戻すことを目的にしているからです。

それは西洋医学を受けるうえでも絶対に必要です。

そして環境(紫外線・環境汚染・電磁波)、生活環境(強いストレス・激しい運動・喫煙・睡眠不足)による身体の酸化、炎症、筋力不足や加齢による重力の負担を改善しない限りは大学病院で高度医療を受けても解決には至りません。

つまり病気の回復はこれらの見直しが必要であり、1回の施術で変化することはないのです。

西洋医学と東洋医学では方法や目的は異なり、西洋医学は医師を中心に医療が提供されますが、東洋医学は自分を中心に受診します。

ですから鍼灸や漢方を受ける場合には必ずご自身でゴールを決めて受けてください。

「言われなかったから治療が必要ないと思った」という方がいますが、そのような考えは間違いです。

「病気を治したい」「痛みを取りたい」「元の生活に少しでも近づきたい」と思うのであれば積極的に情報を集め、積極的に取り組む必要があると思います。

なぜ、そのような考えなのかというと、例えば肩こりにおいて西洋医学では鎮痛剤や筋弛緩剤を使用すれば改善されます。

それだけのことですが、実際にはそれで改善される人は一握りでしょう。

東洋医学では交通事故、噛み合わせ、視力、捻挫、内臓疾患、切創、精神的緊張などを診ます。

施術は細かい問診を必要としますし、症状や体質に応じて施術回数や来院頻度は個人差がでます。

ですから私は初診時に初検料をいただいて短時間に集中して考察します。

そして、その施術は短期間に集中して継続して受けた方が効果はあります。

病気の方は毎日受けても良いくらいで、1週間に1回、1週間に2回でも3回でも良いです。

健康管理の方は1週間に1回、2週間に1回、1か月に1回でも構いません。

1 回の施術で大きな変化は起こらないため、病気を治すことを目的にしている場合には集中して施術を受けてください。

治癒・改善にかかる時間は、症状の程度、加齢、喫煙や飲酒、事故・既往歴・投薬における体へのダメージ、出産・流産・堕胎、不妊治療によるホルモン療法、栄養、運動、睡眠、思考パターンなどの影響を受けることを始めにご理解ください。

施術は状態に合わせておこないます。感覚的に刺激が足らないからといって100%でおこなえば刺激過多になります。

ご自身の治癒力が高ければ少しの刺激でも足りますから、悪化した、変化しないということはありません。

治癒力があればその場で変化しますし、治癒力がなければ1週間後、3,4日後に変化が現れます。

気づいていなくても過度に疲労が蓄積していれば2,3日気だるさが続きます。

施術開始前に検査をして気づかないことも、施術をおこなえば気づくようになります。

それを悪化したと捉える方もいますが、そこからがスタートラインです。

病気や怪我による鍼灸の施術は(病名有り)は日を空けず、慢性的なもの・原因不明なもの(病名無し・自律神経失調症・糖尿病など)は定期的に週に1回、2週に1回は受療してください。

妊活においても20代、30代、40代では施術頻度はことなりますし、初潮から今日までの月経周期や期間、経血量の変化、月経不順、痛みやそれに付随する違和感、過去のダイエット、流産や人口堕胎などによっても異なるでしょう。

健康管理は週に1回が理想的です。

医師は「なぜ鍼灸は悪くない時におこなうのか?」という疑問を抱くそうですが、それは急性期と慢性期の違いであったり、病気を診るか人を診るかの違いであるということをご理解ください。

しかし、急に病気になったと思うかもしれませんが、風邪であったとしても過労や休息が足らないことであったり、それによる免疫力の低下はあるわけです。

鍼灸をおこなわなくても、自分で身体を労わり睡眠時間を確保すれば風邪を防げる可能性は大いにあるわけなのですが、そこに煙草や飲酒が加わり風邪をひき、それを風邪薬で治そうとするのが一般的な考えですよね。

これは果たして治療なのか?

このことが変だと思っている人が一定数いて、その人が時間を確保して身体を整えることを習慣にしています。

「レントゲンやCTやMRIは治療だ」「ロキソニンテープがあれば大丈夫」「この薬を飲んでいるし」という声もあれば、「運動は大変」「鍼をすれば健康でいられる」「この漢方があるから大丈夫」という声もあるわけで、さらには「野菜を食べているから大丈夫」「炭水化物を抜いているから」「プロテインを摂取している」というように思想が傾倒するわけです。

大切なことはバランス感覚であって、「中庸を得る」という考えのもと、どちらにも偏らず、過不足なく調和のとれた状態にあることだと思います。

ですから鍼灸や漢方は飲まなくて良くて、病院に行くものではないのです。

「寝て」「食べて」「動く」といった動物的な営みがあって、大切な人を愛して、大切な人に愛されて、そして娯楽がある。

そういったことを自主的におこなうのです。

ただ、これまで富を手にした人や歴史上の人物でさえ不老長寿はいないのですから、いまこの時間を無駄にしないためにも病気にならないことが大切だと思います。

私は鍼灸院を経営していますが、病気は必要のないものだと思いつつも、病気により気づく人が沢山いることも知っています。

もちろん、私もそれをみているからなおさら学ぶことがあるのです。

本来は先祖から受け継いだ田畑を耕して心身共に健康で暮らしていたいと思いつつ、恩師から学んだものは人のために役立てるから鍼灸をおこなっています。

ですから、このように健康のための考えを言葉に残しながら、何らかの形で役立てるようにしています。

長くなりましたが、何らかの気づきになっていただけたら幸いです。

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