疲労感や憂鬱な気持ちについて
疲労感が抜けず、気分が沈み、何もやる気が起きない。
そんな状態が続くと、多くの人はこう思います。
「これは、鬱なのだろうか……」
けれど、インターネットで調べた情報と、どこか違う。
当てはまるようで、しっくりこない。
それでも「病気なのではないか」と考え始めると、
本当のことが分かるまで、心は不安でいっぱいになります。
仕事や家庭のことで精一杯になり、
気がつけば自分を見失っている。
そして、心配ごとが先に立ち、頭から離れなくなる。
薬で解決するとは限らない現実
では、薬を飲めば解決するのでしょうか。
眠れなければ睡眠薬。
痛みがあれば消炎鎮痛剤。
現代医学は、症状を抑えることに長けています。
それは間違いではありません。
けれど、それだけで根本的に整うとは限らないのも事実です。
鍼灸は全体を診る医療です。
そんな時こそ、頼っていただきたいと思っています。
ある男性患者さんの話
ある日、東京から電車で一時間半かけて、男性の患者さんが来院されました。
顔色は青白く、どこか力がありません。
脈は深く沈み、弱くなっていました。
お話を伺うと、こう言われました。
「今年は5月頃から冷房をつけています。職場もずっと涼しいですね」
「毎年同じように冷房を使っているのに、今年は何だか調子が悪いんです」
毎年、同じ生活をしている。
それなのに、今年だけ違和感がある。
見落とされやすい“変化”
このような時、当たり前のことですが、年齢を考える必要があります。
さらに、社会歴や家族歴、ここ数年の生活背景も含めて見ていきます。
おそらく、ここ数年は同じライフスタイルだったのでしょう。
けれど、「歳を重ねている」という事実は、
本人の意識の中には含まれていませんでした。
身体は、確実に変化しています。
その変化に、生活の仕方が追いついていなかったのです。
ゆっくりと、生命力を起てる
そのことを共有したうえで、背中のツボにお灸をしました。
強く刺激するのではなく、
ゆっくりと温める。
急がず、焦らず、
生命力を少しずつ起てていくための施術です。
スピード重視の現代社会で起きていること
私たちは「スピード重視の社会」に生きています。
情報は瞬時に手に入り、何でも早く進む時代です。
算盤は電卓に。
辞書はインターネットに。
自転車は車へ。
あらゆるものが速くなりました。
けれど、私たちはそのスピードについていっているだけで、
スピードが私たちに寄り添ってくれているわけではありません。
身体は、時間を必要とする
身体が本来の状態に戻るには、時間が必要です。
欲しいものが、すべて理想のスピードで手に入るわけではありません。
施術をしていると、
「早く良くなりたい」という気持ちは誰にでもあります。
しかし、治療を過度に行えば、かえって身体に負担をかけてしまう。
治療を受け止める体力、
それを回復力へと変える力がなければ、
身体は思うように変化しないのです。
待つことも、治療の一部
だからこそ、
ゆっくりと温める。
ゆっくりと、生命力を起てていく。
思うようにならないことに、焦らないでください。
待つという選択が必要な時もあります。
特に、自分自身と向き合う時は、
「早い」よりも「ゆっくり」くらいが、ちょうどいい。
自分の身体を、自然の流れに合わせるためには、
待つことが、とても大切なのです。

