漢方薬と症状の変化について
私たちの身体をつくる細胞は、常に変化しています。
およそ60兆個とも言われる細胞から成る私たちは、
1時間前の自分と、今の自分とで、同じ状態ではありません。
これは何を意味するのでしょうか。
それは、
症状に応じて、治療や薬も変わるべきだ
ということです。
風邪ひとつ取っても、状態はさまざま
たとえば、風邪と一言で言っても、
- 寒気がする、熱がある
- 鼻水や鼻づまりがある
- 咳が出る
- のどが痛い
- 痰が切れない
- 症状が長く続いている
など、現れる症状は人それぞれ、時期によっても異なります。
これらすべてを
「風邪だから同じ治療」
としてしまっては、なかなか良くなりません。
なぜなら、
症状の段階や性質に合わせた対応が必要だからです。
風邪の“場面”ごとの違い
風邪のひきはじめ。
肩や背中にゾクっと寒気を感じたとき。
身体が冷えて、
透明な鼻水が止まらないとき。
喉が乾燥し、
咳が続くとき。
体力が落ち、
長引いてしまったとき。
咳や痰が多く、
なかなか切れないとき。
その「時、その時」に応じた処置が必要になります。
総合感冒薬と漢方の違い
総合感冒薬は、
あくまで「総合的」に作用するものです。
マルチビタミンが
多方面に働きかける一方で、
的の中心を射るわけではないのと同じです。
一方、症状の変化に合わせて選ぶ漢方には、
- 葛根湯
- 小青龍湯
- 麦門冬湯
- 補中益気湯
などがあり、
状態に応じて使い分けられます。
鍼灸も、同じ考え方です
鍼灸もまた、
病がどこまで進んでいるのかを読み取る医療です。
脈を診る。
舌を見る。
鼻水や痰の色、尿の色を聞く。
それらを総合して、
今、身体がどの段階にあるのかを判断します。
こんなことがありました
以前、ある患者さんが、
お子さんの風邪をもらってしまったことがありました。
安静にしていても回復せず、
1か月近く体調不良が続いていました。
「抗生物質を飲んだのに、良くならないんです」
詳しく診てみると、
病はかなり深いところまで達しており、
身体がギリギリのところで戦っている状態でした。
そこで、体質と病状に合わせて鍼を行いました。
すると、
汗が出始め、
お腹が鳴り始めたのです。
鍼の力と「間(ま)」
鍼灸の大きな特徴のひとつは、
即効性です。
そして、もうひとつ大切なのが
「間(ま)」。
この間がずれると、
どれほど良い治療でも、
効果は薄れてしまいます。
風邪の季節だからこそ
喉の痛み、咳、発熱、鼻水。
風邪の季節には、こうした症状が出やすくなります。
どうしても外せない理由がない限り、
薬に頼りすぎることは避けてみてください。
自然治癒力を引き出した方が、
結果的に回復は早いことも多いのです。
風邪をひいたときの選択肢として
風邪をひいたとき、
鍼という選択肢があることを、
思い出してもらえたら嬉しいです。
症状の変化に寄り添い、
身体本来の力を引き出す。
それが、鍼灸の役割なのです。

