時々、仕事の話(2)|私が鍼灸師としてできること

先日、町田から来院した足関節痛の方ですが、紹介者の話によると動きが良くなっていたとのこと。

整形外科へ行ってから良くなることを諦めていたそうですが、回復までの道のりを伝えたことでポジティブになっていたと言います。

一度メスを入れたため元に戻ることはありませんが、50代ということと前向きさを考慮しても運動強度によっては生涯スポーツとして楽しめることを踏まえてコミュニケーションをはかりました。

私はスポーツトレーナーではありませんし、柔整師でも整体師でもないので痛みしか取ることしかできません。

これまで専攻してきたものが異なるので、自分がやるべきこと、出来る範囲のことは理解していますし、専門家を紹介することを最優先しています。

そのため、今回のような依頼は稀であり、「やった、なおった、きいた」ということを安易に書いているわけではありません。

鍼灸マッサージは「風邪をひいたから風邪薬」というわけではなく、その時々の状態に合わせて何らかの方法が選択されますし順序も変えます。

例えばコース料理には順番がありますよね。

しかしお客様の体調を考えると、その順番が必ずしも正しいとは言えません。

本来は料理の量や料理の温度も時々によって変化することが好ましいと思いますがそうはいきません。

ですが私は個人経営なのでそれが可能です。

整形外科でレントゲンを撮影して湿布薬と鎮痛剤を飲むことは標準治療においては正しい。

経営的にも仕方のないことかもしれません。

けれどそれで治らないから鍼灸院に来たわけです。

しかし、それを「やった、なおった、きいた」という考えで成功例として数えてしまうのもまた違うと思っています。

ですから成功例を紹介するつもりはありません。

あくまでも一人の方には適していただけであり、そうでないと落語 葛根湯医者のようになってしまいます。

そして、この方にとっては良い選択であったけれど、最善の方法はまだあったとも考えられますから、常に考えながら施術する必要があります。

昨日、左母指のMP関節が気になるという方に施術をおこなったのですが、これまで細く短い鍼を刺していました。それはパフォーマンス的な意味も含まれ、プラセボ効果も狙ってのことです。

この方とは10年近い付き合いのため、生活習慣や気質的なものも理解していますが、かえってそのことが仇となり回復を遅らせてしまいました。

1つは患者さんが指差し場所を安易に考えてしまったこと。後日フィンケルシュタインテストが陽性となったことで腱鞘炎を疑い直し施術内容を変えました。

指先の五虎に刺して反応をみていたのですが、指先への刺激は恐怖心があり、眩暈を起こす可能性を感じたので右解谿に鍼を刺して時間をおきました。

結果的に痛みが無くなり母指の動きは改善したのですが、改めて【人をみる】ということがいかに大切なのかを知ることになるのでした。

このようなことは正直ときどきあるのです。

つまり良くなっているだけではなく、うまくいかないこともあります。

そのため日々疑問を抱きながら最善の答えを出すように努めています。

今回の仕事の話は、私が日ごろ考えている施術の中身でした。

SNSでは意図も簡単に良くしているように見えますが、鍼そのものの効果は素晴らしいものです。

ただ、それを言語化することは難しく、また鍼灸師が何を考えおこなっているかは、説明しがたい部分があります。つまり簡略化し、さらにイメージを映像化できるように伝えないと難しいものです。

ただ、このように発信することで鍼灸師ではない人が、鍼灸師がどんなことを考えながら施術をおこなっているかを知っていただけたら嬉しく思います。

業界発展のために何らかの役に立てれば幸いです。

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