介護福祉を学んでいた時。
実習で老人ホームに研修に行きました。
高校を卒業して1年程度しか経っておらず何となく世間知らず。
とはいえ目の前に広がる世界が真実であって、そのことに対する違和感は確かにあるわけです。
実習で担当する利用者のこれまでの暮らしをまとめた資料に目を通すと、「明治〇年生」「大正〇年生」と書かれています。
窓側で外を眺めているあの人は戦争に行った人なのか。
あの人は兄弟が多いため家族を養うのに奉公にだされたのか。
そういった一人ひとりの物語に触れました。
ただ、2000年にスタートした介護保険の課題は山積みで、施設という場所はあれども、人が大切にされるという観点においては気になる点がありました。
そういった事を目にすることで、私は鍼灸マッサージという方法から人に触れていきたいと思うようになりました。
「この人たちが生きていてよかった」と思って欲しいと。
途中、鍼灸というものに夢中になってそのことを忘れた時期もあります。
けれど、人に触れるということは体や心だけではなく、空間というものもまた大切であることに気づきました。
居心地に含まれる時間の流れ、光や音、そして匂い。
あれから21年。
人生の折り返し地点に来たことは理解しています。
だから人にやさしくありたいと思います。
誰かの体と心が休まる場所をつくっていきたいと思っています。
『場所』というものに意識を置くようになったのは、この本を読んでからでした。
お時間あればぜひ。
『いのちは のちの いのちへ|稲葉俊郎|アノニマ・スタジオ』