この仕事に携わって、
20年が経った。
はじめの頃は、
人を治すことが楽しかった。
症状が良くなり、
喜んでもらえる。
そのことが
自分の存在意義のように
感じられていた。
けれど、
経験を重ねていくうちに
ある違和感が生まれた。
もしかすると私は、
病気を作っているのではないか。
そう思うことがあった。
治療を続けても、
人はまた不調を抱える。
結局、
同じ場所をぐるぐると
回っているだけではないか。
医療は人を救う。
けれどそこには、
依存が生まれることもある。
その場所に
居続ける関係は、
本当に幸せなのだろうか。
そんな疑問を
持つようになった。
もちろん、
日本の医療制度は
とても優れている。
科学も日々進歩している。
それでも、
人々の幸福度は
それほど高くない。
豊かになった社会のなかで、
私たちは何を
失ってしまったのだろう。
ある高齢の女性が
こんなことを言っていた。
「戦争の時代と比べたら、
今はとても豊かですよ」
たしかにそうだと思う。
けれど同時に、
この時代に必要なのは
立ち止まることではないかと
感じている。
お茶を飲み、
会話をする。
そして、
身体を整える。
それは贅沢な時間だと
言われることもある。
けれど、
本来はとても
自然な時間なのかもしれない。
もしそうだとしたら、
そのことに気づいた人のための
場所をつくりたいと思った。
ここでは、
病気を治すことを
目的にはしていない。
それは病院の役割だからだ。
私は、
より良く生きたい人のために
関わりたいと思っている。
主体は治療家ではなく、
ここを訪れる人。
その人自身が
自分の身体を感じ、
整えていく。
そのために、
これまで学んできたことを
静かに提供していきたい。
この場所は、
身体を観る場所であると同時に、
人生の余白を
整える場所でもある。

