IVF鍼灸
近年、体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)などの生殖補助医療(ART)の普及に伴い、鍼灸が生殖医療の補完療法として注目されています。
鍼灸は、ホルモン環境や血流の改善、自律神経の調整などを通じて、卵巣機能・子宮内膜環境の最適化を図ることが目的です。
病態生理と鍼灸的意義
IVF前の鍼灸介入は以下の生理学的および東洋医学的観点から意義があるとされています。
卵巣・子宮血流の改善
超音波ドプラー検査により、鍼刺激後に子宮動脈血流抵抗指数(PI, RI)の低下が確認された報告があります。血流改善は卵胞発育や内膜受容能の向上に寄与します。
自律神経・内分泌系の調整
鍼刺激により視床下部-下垂体-卵巣系(HPO軸)への影響が指摘されており、エストロゲン分泌や排卵機能の安定化が期待されます。また、交感神経過緊張の緩和を通じ、ストレス性ホルモン(コルチゾール)低下も報告されています。
東洋医学的弁証施術
東洋医学的には、「腎虚」「肝鬱」「血瘀」などを主な弁証として腎精の補充と気血の調和を目的に施術します。代表的な経穴には、関元・気海・三陰交・太谿・中極・足三里などが用いられます。
臨床的エビデンス
複数のランダム化比較試験(RCT)やメタアナリシスにより、鍼灸併用がIVF移植あたりの妊娠率上昇に寄与する可能性が報告されています。
一方で、研究間のばらつきや手技差があるため、鍼灸は補完療法として位置づけることが妥当とされています。
当院の取り組み
当院ではIVFスケジュールやホルモン治療内容に応じて
- 採卵前の卵巣血流改善
- 移植前の子宮内膜環境調整
- ストレス・自律神経バランスの調整
上記を目的とした施術をおこおないます。
西洋医学的治療との協調を重視し、安全かつ科学的根拠に基づいた施術を行います。

