人は、どこでズレたのかに気づけたとしても、
すぐに元に戻れるわけではない。
むしろ、そこからが難しい。
長い時間をかけて積み重ねてきたものは、
簡単には外れない。
正しいと思ってきたこと。
守ってきた考え方。
うまくやるために選んできた行動。
それらは、その人を支えてきたものでもある。
だから、無理に手放そうとすると
かえって不安定になる。
戻るというのは、
何かを否定することではない。
少しずつ、本来の感覚に触れ直していくことだ。
最初は、とても小さい。
違和感を無視しないこと。
ほんの少し立ち止まること。
それだけでも、十分に変化は始まる。
けれど、多くの人は
その感覚をうまく扱えない。
なぜなら、長いあいだ
自分の感覚よりも「正しさ」を優先してきたからだ。
だから私は、身体から入る。
身体は、ごまかしがきかない。
頭では納得していても、
身体は正直に反応している。
力が抜けない人は、
やはりどこかで緊張している。
呼吸が浅い人は、
無意識に何かを抑えている。
その状態に、静かに触れていく。
無理に変えようとはしない。
ただ、今どうなっているのかを
一緒に確認していく。
身体が少し緩むと、
それまで見えなかったものが浮かび上がる。
思考の癖。
行動のパターン。
繰り返している関係性。
それらが、自然と見えてくる。
ここで初めて、選択が生まれる。
これまで通りでいるのか。
それとも、少し変えてみるのか。
人は、自分でしか変われない。
だから私は、変えようとはしない。
ただ、気づける状態を整える。
身体を通して、
感覚に触れられるようにする。
そのうえで、その人自身が選ぶ。
どう在りたいのか。
どう生きたいのか。
それは、誰かが決めるものではない。
人生の主人公は、自分自身だからだ。
私は、そのための媒体でしかない。
少しだけ、流れを整える。
少しだけ、見え方を変える。
それだけで、人は戻り始める。
本来の自分に。

