「人はなぜ、誰かを“信じすぎてしまう”のか」

先日、テレビを見ていて興味深い内容が紹介されていた。

ある有名芸能人が、
「神の声が聞こえる」という女性に
強く影響を受けていたという話だった。

いわゆるマインドコントロールである。

一般には「洗脳」と呼ばれることもあるが、
言葉や態度、行動、情報によって
他人の心や判断が影響を受けていく状態を指す。

こうした出来事は、
宗教やカルトの問題として語られることが多い。

しかしよく見てみると、
似た構造は社会のさまざまな場面に存在している。


心理学では、人が影響を受けやすくなる要素として
いくつかの特徴が挙げられている。

たとえば

・返報性
・コミットメント
・社会的証明
・好意
・権威
・希少性

こうしたものは、
マーケティングの世界では基本とも言われている。

通信販売、
企業の広告、
YouTubeの宣伝。

多くのものが、
これらの要素を組み合わせて作られている。


私は以前から、
鍼灸や整体という仕事は

宗教やカルトと
ある種の親和性を持ちやすい

と感じている。

もちろん、それ自体が問題という意味ではない。

ただ、構造として似ている部分がある。


病気になると、
人は心身ともに疲れてしまう。

痛みや不安の中で、
何かに頼りたくなる気持ちは自然なことだと思う。

いわゆる

心理的な脆弱さ
孤立感
救いへの期待

そういった状態のとき、
人は誰かを強く信じやすくなる。


実際、医療と代替医療の関係にも
興味深い違いがある。

西洋医学は
数値や画像など
目に見える指標を重視する。

一方で

痛み
ストレス
違和感

こうした主観的な感覚は、
必ずしも得意な領域ではない。


東洋医学や整体は、
むしろそこを扱う。

症状や感覚を手がかりにして
身体全体を整えていく。

そのため、
人と人の距離が近くなる。

触れることも多く、
時間も長い。

この関係性が、
信頼を生みやすくする。


以前、SNSでこんな投稿を見た。

整形外科では
半年間ずっと湿布だけで
一度も触診されなかった。

しかし
鍼灸や整体を受けたら
すぐに良くなった。

コメント欄には

「地元のゴッドハンドに治してもらいました」

という言葉も並んでいた。


では本当に
医師には治せず
鍼灸師が治したのだろうか。

あるいは
その逆なのだろうか。

正直なところ、
そこは簡単には言えない。


ただひとつ言えることは、

人は「理解された」と感じたとき、
身体の反応が変わることがある

ということだ。

痛みの背景には

孤立
不安
混乱

そういった感情が
重なっていることも多い。

それを受け止めてもらえたとき、
症状が軽くなることもある。


だからこそ、
この仕事には注意が必要だと思っている。

施術者は
依存されやすい立場にいる。

触れる。
話を聞く。
時間を共有する。

それは強い影響力を持つ。


だから私は、

権力欲求
承認欲求

こういったものを
この仕事に持ち込むべきではないと考えている。


世の中には
「ゴッドハンド」と呼ばれる施術者もいる。

その人がどんな思いで
施術をしているのかは分からない。

ただ私は

施術者を神格化する必要はない

と思っている。

施術は
あくまで方法のひとつだからだ。


誰かが触れたから治る。

そう考えるよりも、

自分が何を望み、
何を選ぶのか。

そこに目を向けることのほうが
大切なのではないだろうか。


身体のことで不安になったときは、

まず
家族や友人と話してみる。

そして
いろいろな情報を見る。

情報の出どころや目的を考えながら
自分で調べてみる。


人生は、
誰かに預けるものではない。

他人の言葉よりも
自分の感覚を大切にすること。

それが
個人として生きるということなのかもしれない。


世の中に
「絶対の治療」は
たぶん存在しない。

あるのは、
いくつかの方法と
それを選ぶ人の意思だけだ。

その選択を
誰が決めるのか。

それはきっと、
施術者ではなく
あなた自身なのだと思う。

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